インプラントの治療ができない・お勧めできない人は?
自然な歯に近い感覚で過ごすことができるインプラントは、多くの人に対してお勧めできる方法です。しかし、人によってはインプラントをお勧めできず、別の方法をお勧めするケースもあります。そこで、インプラント治療を利用できない、またはお勧めできない人について解説します。
骨粗鬆症の人
一つ目の理由は「骨粗鬆症の人」です。インプラント手術では顎の骨を削って、その中にインプラントを埋め込みます。そのため、骨の密度が減少してスカスカな骨になっていると手術によって折れやすくなるため、インプラント手術が向いていない可能性があるのです。
但し、骨の量や厚み、骨の状態によっては「増骨術(骨造成手術)」を利用することによってインプラント治療が可能になるケースもあります。人工的に骨を充填あるいは移植することによって、インプラント手術の妨げになる骨の不足を補います。どの方法が適しているかは患者さんの骨の状態によりますので、骨粗鬆症の人は歯医者で相談してみてください。
糖尿病の人
二つ目の理由は「糖尿病の人」です。糖尿病の場合、骨粗鬆症と違って「手術に向かない」のではなく「手術後の問題」が大きいです。それは、糖尿病の患者さんは「感染症にかかりやすい」という特徴があることが関係しています。
糖尿病患者さんは、白血球や免疫に関係する細胞の機能が低下してしまうため、感染症に対する抵抗力が低くなってしまいます。インプラントは土台となる顎の骨に、感染症の一種である「歯周病」の影響を受けると、最悪の場合は埋め込んだインプラントが抜け落ちてしまうケースもあります。ただし、糖尿病であると診断されていても、治療によって血糖値のコントロールができている場合には、インプラント治療が可能なケースもありますので歯科医院で相談してください。
腎臓病の人
三つ目の理由は「腎臓病の人」です。腎臓病も糖尿病と同じく、免疫力が低下しているために傷が治りにくく、インプラントと骨との結合が難しいケースが考えられます。
また、人工透析を行っていて、血液の循環を改善する薬を服薬している場合、インプラント手術を行った際に止血が困難になり、出血により危険な状態になる可能性があります。
ただし、すべての腎臓病患者および透析患者がインプラント手術を利用できないというわけではありません。インプラント手術が可能かどうかについては担当の医師と相談して、可能であれば手術を受けてください。
肝臓病の人
四つめは「肝臓病の人」です。肝臓に病気を抱えていると、血液を固める成分が不足している可能性があります。するとインプラント手術による傷からの出血で血が止まりにくくなるため、出血により危険な状態になる可能性があります。腎臓病と同じく、担当医にきちんと相談してインプラント手術の是非を確認してください。
タバコを多く吸う習慣がある人
五つ目は「タバコを多く吸う習慣がある人」です。俗にいう「ヘビースモーカー」の人の場合、インプラント手術はあまりお勧めできない手段となります。
タバコを吸う人は、血液中に入ったニコチンが白血球の機能を低下させて血管を収縮させてしまうことにより、毛細血管の血流が悪くなるため傷の治りが遅くなる可能性があります。また、口の中に細菌が増殖しやすく、インプラントの天敵である歯周病に対する免疫力を低下させてしまいます。インプラントと骨の結合にも支障が出るでしょう。
歯の健康のためにも、喫煙は控えたほうがよいです。インプラント治療をきっかけに、禁煙を始めたという人も珍しくありません。ただし、特に禁煙の習慣が重い人は急にタバコをやめるということは決して簡単なものではなく、禁煙外来に通うなど相応の努力は必要になるでしょう。
手術後のメンテナンスが面倒だと思う人
最後の理由は「手術後のメンテナンスを面倒だと思う人」です。インプラントは顎の骨に土台となるパーツを埋め込むことで自然な歯に近い状態で生活を楽しめるというメリットがあります。しかも人工歯なので虫歯(う歯)の心配もいらないということで、半永久的に使い続けられると勘違いしている人も少なくありません。
確かに、インプラントの寿命は入れ歯やブリッジ治療と比較して長いと言われています。しかし、長い寿命は「定期的なメンテナンス」を受けることによって、その恩恵を受けられるのです。つまり、メンテナンスを面倒だと感じて、次第にメンテナンスに行かなくなってしまえば、長い寿命どころか、すぐにインプラントがダメになってしまう可能性だってあるんです。
その最たる原因は「インプラント歯周炎」です。歯周炎は最終的に顎の骨を溶かしてしまうので、インプラントのパーツ自体はダメージが少なくても、それを支える骨がダメージを受ければぐらついて、最終的に抜けてしまいます。インプラントは保険適用外、1本で数十万円の費用がかかるものなので、抜けてから埋め直せば良いなんて考えてはいけないのです。