インプラントに利用される「チタン」が骨と結合できる理由
2018年01月30日 (火)
インプラントに利用される「チタン」が骨と結合できる理由

インプラント治療が日本に伝わって数年。このインプラントという治療法の発見は、私たち人類にとって非常に大きな影響を与えてくれました。
インプラント治療を成立させるためには、骨とインプラントに使用されているチタンが重要となります。チタンが骨と良好にくっついてくれることで、インプラントが安定するからです。チタンは一番良い材料であり、安定して口の中に存在できます。
今回は、「チタンが骨と良好にくっつく原理」について説明します。

チタンと骨の関係

チタンは生体親和性の高い材料です。生体親和性とは「身体との調和」のことで、生体親和性が良いということは「身体への影響が少ない=悪影響が少ない」と言い換えることができます。ちなみに、歯科において、チタンはインプラントでしか使用されていません。価格が高いこともあり、詰め物や被せ物には利用されにくいのです。
また、生体への影響がないということは、良くも悪くも身体との反応が少ないという意味です。
インプラントで大切なのは、顎の骨とインプラントのボルトが結合することです。結合しなければ意味がないですし、噛んだときにずれてしまいますよね。
インプラントと骨をしっかりと結合させる能力を「オッセオインテグレーション」と呼びます。では、オッセオインテグレーションとはどういう物なのでしょうか。

オッセオインテグレーションとは?

オッセオインテグレーションとは、チタン表面に特殊な加工を行い、骨がくっつきやすい環境を作ってあげることです。これにより、骨がチタンの周りに形成されやすくなります。また、骨との結合力を高めるために、インプラントの形状にボルト状や溝を付与することで、結合力を高めているのです。

オッセオインテグレーションの獲得には、ある一定の期間が必要です。
上顎であれば6か月、下顎なら3か月ほど必要となります。これは、骨の中にある「海綿骨」と呼ばれる部分が多い上顎の結合が安定するまでに時間を要するため、期間に差が出てきていると言われています。
歯医者で、インプラント手術の説明の際に「最初にインプラントを入れてから数ヶ月待ちます」と言わるのはこのためです。

インプラントの良いところ
インプラントの良いところ

インプラントは、ブリッジや入れ歯と比べて、どのような点が注目されているのでしょうか。各治療法と比較して良いところをご紹介していきます。

■アレルギーが少ない
これはチタンの大きなメリットの1つと言えるでしょう。チタンは、金属アレルギーの患者さんでも使用することができます。金属アレルギーの患者さんが反応する金属として代表的なものといえば「ニッケル」「コバルト」「水銀」などです。ニッケルやコバルトは、金属の詰め物や被せ物(いわゆる銀歯)に使用されます。水銀は、現在では日本国内の診療で禁じられていますが、患者さんの口の中に入っている可能性はあります。そんな水銀もアレルギー反応を起こす危険はあるのです。
金属アレルギーは「遅延型アレルギー」とも呼ばれており、金属を装着した時は問題ないものの、24時間以上経過すると発赤や発疹などの症状が出てきます。代表的なのは発赤で、金属の触れている部分全てに発赤が出てしまいます。

■他の歯への影響が少ない
ブリッジの場合、両隣の歯を削らなければいけません。しかし、インプラントであれば欠損している歯だけをインプラントで補うことができます。両隣の歯が健康な歯だった場合に、影響を及ばさなくて済むのは大きな魅力ではないでしょうか。

■噛んでいる感覚がある
本来、歯の根っこには「歯根膜」と呼ばれる膜があります。歯根膜は、歯にかかった圧力を受け取り、どのくらい力がかかっているかを脳へ伝えます。インプラントは、顎の骨に1本ずつボルトが埋まっているため、実際に噛んでいるときのような感覚を得ることができるのです。しかし、ブリッジの場合、欠損している部分はポンティックと呼ばれる「下が空洞の金属」が代用されるだけなので、噛んでいる感覚を得ることが難しいのです。入れ歯は、義歯が粘膜に覆いかぶさっているだけなので、噛んでいる感覚を得るのは難しいと言わざるを得ません。

インプラントの応用

インプラントは、歯科領域だけではなく、様々な医療の現場でも応用されています。「骨とチタンの結合は歯科だけ」と思っている人が多い傾向にありますが、他分野でもこのように活用されているのです。

■骨折したとき
骨が折れたとき、骨と骨を強く固定するためにインプラントを使用します。生体内で安全かつ確実に固定をしたいとき、インプラントは最適なのです。

■人工関節
人工関節を使用する際、関節の形をしたインプラントを埋めてあげると、関節が円滑使用できるようになります。また、従来の人工関節より成功確率も高くなっているのです。

■ペースメーカー
ペースメーカー自体は、インプラントと同じ材質でできています。生体内で安全に正しく機能するためにも必要な材料であることが分かりますね。

■人工内耳
人工内耳には、骨に電気信号を伝える役割があります。また、チタンは「軽くて丈夫」という特性があるので、耳に入れても負担にはなりません。

もはや、インプラントに使用されているチタンは、医療現場に必要不可欠なものになっているのです。